日本人はグローバル人材になれるか!
北村英樹氏(京セラインド社長)
中国で販売会社の立ち上げを主導し6年、 その後シンガポールに1年、 そしてインドでの会社立ち上げも主導。 インドでのビジネスはすでに5年を超える。 アジア新興国のビジネスに精通。 定年までインドに骨をうずめる覚悟で駐在。剣道5段。
巷間盛んにグローバル化、グローバル人材ということがいわれるが、実際のところグローバル人材とはどんな人材なのか。日本人はどのようにしていけばグローバル人材として活躍していけるのか、シンガポールや中国、インドなどのアジア諸国で長年営業・ビジネスの立ち上げを経験している京セラインドの北村社長に話を聞いた。
ーー中国の次はインドといわれ続けて久しいですが、現状中国には23,000もの日系企業が進出しており、15万を超える日本人がいます。一方でインドはようやく日系企業の数が1,072を超えたぐらいで、日本人の数も7,132人という規模。なぜインドへの進出はすすまないのでしょう。(2013中国貿易外経統計年鑑、外務省「海外在留邦人数調査統計(平成25年要約版)」、在インド日本国大使館 進出日系企業リストより)
多くの日本人はインドのことをなめている(笑)。牛が道に寝ているとか、ボロボロの服を着ている人が多いとか、道端のカレーをみんな食べているとか、町が汚いとか、インド人は嘘ばかり言うとか、ネガティブなイメージが強すぎる。そういうことに気をとられている間に、韓国や中国にビジネス面で確実に差を付けられている。
インドにくればサムソンやLGがどれほど浸透しているか実感できる。印中貿易をみても、印中は国境問題もあり関係が必ずしも良好とは言えないにも拘わらず、関係良好なはずの日印貿易にくらべて、近年非常に規模が大きくなっている。 またインド人についていえば、大卒者、英語話者、理工系人材の数が圧倒的に多く、そしてそういった優秀な人材のサラリーが安いこともあり、これからインドのみならず、アフリカなど他の新興国でビジネスを展開する場合でもインド人を使わない手はない。まずはステレオタイプのイメージを捨ててインドと真剣に向き合う必要がある。
ーーインドとともにグローバルへということでしょうか。ではその際に日本人の立場としてはどんな人材が必要とされるのでしょうか。グローバル人材とはどのような人材なのでしょうか。
私はこれから世界経済を牽引していくのはインドやアフリカといった新興国だと思っている。人口構成比をみても、日本のような先進国はどんどんマーケットは小さくなっていく一方で、インドやアフリカはもう人数だけ見ても全然違う。これから近い将来絶対にインドやアフリカ等新興国がビジネスの主戦場になってくる。ただし、これらの国は商習慣や生活習慣が全く違っていて、グローバルスタンダードが通用するような先進国、例えば欧米やシンガポールもそうだけれど、そういった国での仕事のやり方は全くと言っていいほど通用しない。 真のグローバル人材とはインドやアフリカのような新興国において現地の文化や習慣を本当に理解して、現地の人を使って仕事ができる人材。人財とよんでもいい、こういった人財が必ず必要になってくる。
ーーかなりハードルが高く感じます。日本人はグローバル人材に向いているのでしょうか。
京セラインドの中心的な企業哲学として、“ICU“という言葉を使っている。ICUというと通常病院の”Intensive Cure Unit”の略語だが、私の会社では”I Care You”のこと。つまり人に対する思いやりや気遣い。これは日本人が非常に得意なことで、DNAレベルで他国の人達とは違うのではないかというぐらい強い。例えば、会社の中でトップに近いポジションであっても従業員に対する気遣いができる、取引先に対して気遣いができる。心を遣うやり方は人それぞれだし、遣う訓練をしないとなかなかできない。ただ日本人はいったんやりだしたら他国の人が真似できないような心の遣い方ができる。“おもてなし”という言葉は、“表なし”と言われる程、利他に根差した言葉で、相手から見返りを求めない、表も裏もない細やかな気遣いができる、それが日本人のDNA。それは人を感動させ勇気を与える力になるし、人を動かす力になる。この力は非常に強くて国籍や国境を越える。
ーーインドにいると”自分だけがよければ…”というインド人が多いように感じてしまう場面も多いですが、日本人の”ICU”はインド人にも伝わるのでしょうか。
インド人は実はそこのところの考え方が日本人に非常に似ている。親を非常に大事にするとか、目上の人に敬意を払うとか。外見の違いやイメージから日本人の側にインド人に対する見下し感があるかもしれないが、こちらの”ICU” は必ず伝わるし、インド人に敬意を払うことでしかインド人からの信頼は得られない。
ーー”ICU”の他に必要なことは?
その上でグローバルな環境でやっていくには覚悟が必要。現在、インド・アフリカで差をつけられている中国・韓国の企業、韓国の例でいうとサムソンなどは優秀な若手を1年間現地トップの大学に留学させる。その間は現地法人への立ち入りは禁止。それなりの予算をもらって三つのことだけやる。言語の習得と学内・学外の人脈構築及び文化の理解。また、駐在の際は必ず家族帯同、子女は現地校に通わせ、現地に根付く。覚悟が違う。私も定年までインドから帰らないつもりだし、そのことを公言しているからみんなそれなりに信用してくれる。その上で何のためにここにきたのか、どうしてそれがやりたいのかを自分自身に対して明確にし、覚悟と志と情熱をもってすればどこでもグローバルな世界で戦えると信じる。 加えて”ICU"を忘れずに挑戦すれば必ず道は開ける。
ーーありがとうございます。インドでの仕事に関して、よく日本人の方とお話しすると、スケジュール通りに物事が進まない、それを日本側から非難されるなどの話もききます。
もちろんビジネスなので、当然期限もあるしそれまでにできなければビジネスとしてまずいとかそういうことはあるんだけれど、そもそも予定通りに物事が進むと思ってはいけない。予定がおしたり、約束が反古にされたりした時に慌てない、裏切られたと思わない。インド人もやりたくて予定を送らせたり、約束を破ったりしている訳ではなく、そこで誰かのせいにしても物事は進まない。いろいろなケースを想定しておいて、粘り強く進めていくことが重要。
ーーグローバル人財としてインド人を使ってビジネスができることが重要ということでしたが、最後にインド人従業員のマネジメントについて、大事にしていることを教えてください。
逐一報告させても悪い報告はあがってこない場合が多く、あまり意味がない。基本的には信頼してある程度任せること。問題になったり、問題になりそうな時、必ず助けを求めるようにいっておくこと。最初はこちらの期待通りにできないのは当たり前。徐々に鍛えていくこと。そうすると日本人並み、日本人よりも優秀な人財に必ずなる。ここでも常日頃から気遣い・気配りをしてよい関係を作っておくことが重要。
(聞き手・印得編集部)
本インタビューは印得マガジンに(2014年11月)掲載されたものです
本インタビューは印得マガジンに(2014年11月)掲載されたものです
First time in India.
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